【002】経営の全体像って知っていますか?

 中小企業診断士である山田隆司が、
経営学修士MBAの2年を含めた約7年の経営に関
する知見から、中小企業における経営学の活用につ
いての解説をお送りいたします。

【要約】
 経営の全体像を図表で示しながら、10つの領域
をそれぞれ解説しました。各領域が有機的に影響し
あいながら、全体として機能することが経営となり
ます。

【結論】
 経営学とは、経済学・心理学・統計学・哲学など
 さまざまな分野のアプローチを活用して、
 経営に関する「問い」を、理論を一般化・概念化
 にして解き明かすものです。

 経営全体の解説図が示す通り、経営の構成要素は
 「理念、戦略、組織、人事、労務
 企業ガバナンス、財務会計マーケティング
 生産活動、情報インフラ」の10つの領域を
 包括したものになります。
 各要素はお互いに影響しあいながら、一体的に
 運営されるものを企業活動といいます。

 中小企業経営にこれを置き換えると、
 経営に対して、どのような信念をもって、どのよ
 うな方向性を示して、どのような社内体制・役割
 分担で、どんな働き方で顧客に価値を提供するの
 かが企業活動では重要になります。


【本文】
1.経営の全体像とは何なのだろうか?

 中小企業の経営者が、日々当たり前にやっている
 事業は経営の構成要素の内、どこ領域に該当して
 いて、何をよくわかっていて、何を知らないのだ
 ろうか?
 経営者の考えに偏りがあることによって、
 他者との意思疎通が難しいことはありませんか?
 変化の激しい時代において、経営を俯瞰して考え
 る能力は、ますます求められてきます。

 まずは私が学んできたことを経営の全体俯瞰図と
 して示します。経営の全体像を把握して、現状の
 得意・不得意がどの分野なのか、その理解から
 始めてはいかがでしょうか。

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経営の全体俯瞰図


 それでは、経営全体の解説図を参考にしながら、
 経営の構成要素に対して1つ1つ概要を解説して
 いきます。

 

2.経営の構成要素の解説
 1)経営理念
  経営者や企業が表明する基本的な考え方や価値
  観などを意味します。経営者や従業員の共通の
  基礎となる言葉を規定いたします。
  キーワード:ビジョン、ミッション、価値観、
       行動指針
 2)戦略
  戦略とは、企業のもっている抽象的な目的を
  より具体的に方法論を語ったものになります。
  例えば、事業ドメインを決めたり、方向性や

  資源配分、事前の環境分析も含まれます。
  戦略論には2つの視点があり、1つ目が競争
  戦略論で、競合他社との立ち位置が重要である
  と説いたマイケル・ポーター教授の「ポジショ
  ニング」と、2つ目が内部資源が競争の源泉で
  あると説くジェイ・バーニー教授が提唱する
  「ケイパビリティ」があります。
  キーワード:環境分析、事業ドメイン
      資源配分、成長戦略、競争戦略、
      技術経営、差別化戦略
 3)組織

  組織とは、人間活動の集合体であり、バーナ
  ード教授によれば、人々の意識的に調整され
  た活動のことをいいます。
  また、組織の成立条件として、①共通目的、
  ②貢献意欲、③コミュニケーションの3つを
  挙げています。
  キーワード:組織構造、組織行動(個人と
     集団)、組織文化、リーダーシップ
     モチベーション、チームビルディング
 4)人的資源管理(人事)
  企業戦略の達成のために、必要となる人材の
  資質や能力を予測し、業務を遂行する条件を
  満たす人材を確保する目的で、採用・教育
  などする諸活動のこと。
  人事とは主に、人材資源管理を行うための

  ルールであり、その構造となっています。
  キーワード:採用、配置、育成、評価、
       報酬、退職
 5)人的資源管理(労務
  労働に関する法律に基づいて従業員の権利で
  適切な労働環境で守るため、環境整備の
  事務的な役割を担うことをいいます。
  キーワード:環境整備、安全衛生、
      就業規則、勤怠管理、給与計算、
      福利厚生、社会保険
 6)企業統治(コーポレート・ガバナンス)
  社会的な規範に基づいた企業を統制・監視

  する仕組みのことをいう。企業ぐるみの
  不正行為が続くなかで、自浄作用を有効的
  に機能させる必要性が高まっています。
  キーワード:コンプライアンス(法令順守)
      企業倫理、行動規範、民法、契約
      営業秘密、情報漏洩、
      会社法、機関設計、知的財産権
 7)財務会計
  企業が所有する現金や資産を財務諸表に
  して、さまざまなステークスホルダーに
  説明したり、企業価値向上のために
  管理会計を用いて将来の投資について
  数値を用いるものとなります。
  キーワード:
   アカウティング(BS、PL、CF)、
   税務会計、財務分析、CVP分析

   ファイナンス管理会計)、投資計画、
   現在価値計算、NPV・IRR・EVA、
   企業価値計算、株式市場、リスクとリターン、リスクプレミアム
 8)マーケティング
  マーケティングとは、顧客、依頼人
  パートナー、社会全体にとって価値の
  ある提供物を創造・伝達・配達・交換する
  ための活動とプロセスになります。
  マーケティングを体系化したフィリップ・
  コトラー教授が有名です。

  キーワード:市場調査、STP、4P、
       消費者行動
 9)生産活動(オペレーション)
  財・サービスの生産に関する管理で、品質・
  コスト・納期の視点で最適化を図りながら、
  付加価値を創出する生産・流通・販売に関する
  一連の活動であります。
  キーワード:開発、設計、調達、作業、販売、
      生産形態、QCD、5S、IE、
      物流ネットワーク、POSシステム、

      店舗設計、マーチャダイジング、
      商品予算計画
 10)情報インフラ
  企業活動の情報に関して支援をする基盤技術の
  総称をいいます。情報システムを稼動させる
  基盤となるコンピュータなどの機材や、
  ソフトウェアやデータ、ネットワークなどが
  挙げられます。
  キーワード:ハードウェア、ソフトウェア、
      ソフトウェア開発、ネットワーク、
      プロジェクト管理、情報セキュリティ、
      ITサービスマネジメント、統計解析
      基幹システム(バックオフィス、
      ミドルオフィス、フロントオフィス)
      最新技術(AI、RPA、等)

 


【次回予告】
 私が経営診断する場合、経営の構成要素を基本に
中小企業の経営レベルを見極めるため、3つの視点
「成長ステージ」「ビジネスモデル」「組織成熟度」を基準に判断していきます。
次回以降、経営診断で経営レベルを判断する、
3つの視点について、1つずつ解説していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。